株式会社アイリスファーマは、約65店舗を展開する調剤薬局チェーンです。薬剤師の業務が「対物から対人へ」とシフトする中、対面でのコミュニケーション力の重要性がさらに高まっています。対面だからこその薬剤師の価値を高めるため、若手薬剤師の専門性と対応力の早期向上を目指し、カルティロープレを導入していただきました。
患者様の「隠れた悩み」を引き出し「共感力」を養う研修を実施し、新人薬剤師でも1人で練習できるようになったストーリーをご覧ください。
オンライン服薬指導などデジタル化が進む薬剤業界において、対面でのコミュニケーション力の重要性がますます高まっていると感じていました。
だからこそ若手薬剤師の対応力向上のため、より効果的な教育アプローチを求めていました。本部としてより実践的でリアルな服薬指導に関して、計画的・体系的に進められる仕組みを整えたいと考えていました。
実践的な服薬指導に関しては、OJTとして店舗に任せている状況です。ですが、店舗ごとに指導機会や密度に差が生じやすく、薬剤師一人一人独自のスキルで服薬指導を実施しているのが現状でした。
以前は4人グループでのロープレを実施していました。あらかじめ、患者さんの「隠れた悩み」を設定しておき、薬剤師役がそれを聞き出して寄り添う、という趣旨のものです。教育係が患者役を務め、研修生が1人ずつ薬剤師役で服薬指導を行い、他の3人は、投薬者のフォローをしたり、薬歴やトレーシングレポートの記載をします。
しかし、いくつかの限界がありました。患者役が偏ってしまい、同じ人が担当すると答え合わせのようになったり、どうしてもヒントのような目配せをしてしまうなど、実際の患者様ほどシビアではない甘い環境になってしまっていました。
また、実際の患者様はそんなに話してくれないので、もっとリアルな環境で練習したいと考えていました。
2人組でペアを組んでもらい、1人がAIアバターを相手にロープレを行い、もう1人がそれを聞いて薬歴として記録を作成するという方式を採用しています。研修担当がその周りでアドバイスを行う体制です。
経験年数に応じて異なるシナリオを用意し、1年目向けには基本的な服薬指導スキルの習得を、2年目・3年目向けにはより複雑な患者対応や隠れた悩みの聞き出しを重視したシナリオを設計しています。シナリオをフレキシブルに設定できるのが非常に有効だと感じています。
「隠れた悩み」を設定したシナリオを重視しています。例えば、子供の軟膏が処方されたケースでは、表面的には「かゆみ止めの軟膏が出ました」という説明で終わりがちですが、実際は「子供が暴れてお風呂上がりに塗れない」という悩みを抱えているという設定を作っています。
高齢患者のケースでは、「飲めていますか?」と聞いて最初は「飲めているよ、問題ないよ」と答えるが、いろいろ掘り下げていくと実は飲み忘れが見つかるということが分かってくるという、よりリアルな患者像を再現しています。
評価項目は表向き5〜6個ですが、そこから細分化し隠れたポイントを2〜3個設定しました。カルティロープレのアバター作りやシナリオ作成は比較的スムーズにできました。
研修で楽しそうだったのが一番印象的でした。薬剤師が能動的に「考える」ようになったことも変化を感じたポイントです。薬の説明だけで終わってはいけない、聞いてみよう、共感しよう、隠れた悩みがあるかもしれないということを考えるきっかけになったと感じています。
特に1年目の薬剤師からは、「これから本当に患者様を前にする前に1回練習できたのは良かった」という声が聞かれました。AIが相手だからこそ、とりあえずいろいろ言ってみようというトライアル精神が生まれ、自分で最初から最後まで完結できるのが良いという反応もありました。
カルティロープレは、一言でも何か言うだけでシステムが反応してくれることで、共感の実感を得られたようです。学生時代から言葉として教わる共感ということよりも、実体験として理解できるようになったのが重要な変化でした。
それぞれメリット・デメリットがあると思います。人間の場合はその場で方向修正などもできますが、AIアバターだと良くも悪くも何を言われるか分からない中で服薬指導していくので、より緊張感があり、よりリアルな感じがあります。
また、従来のロールプレイは2人で行いますが、AIロールプレイだと1人で練習することができるのは、大きな違いだと思います。
最初は新しいシステムということで慣れるまで少し時間がかかりましたが、慣れてからはリラックスして練習できるようになっていたようで楽しんでいました。
指導内容がログに残っているので、オブザーバーの人数が限られていても、ログを見て指導でき、指導者の効率的な指導が可能になりました。
また、自分一人で練習ができて、再度繰り返すなど、個人のペースに合わせた学習が可能となりました。
受講者自らが回答例を参照することにより、様々な服薬指導の仕方がある事も学習できます。その為、指導の軽減に繋がりました。
薬剤師の服薬指導では、患者さんの気持ちやちょっとしたニュアンスに寄り添う必要がありますが、それを評価システムに落とし込むのが難しかったと感じています。
営業担当の方にアドバイスを頂いたり、何度も試したりして慣れてくると、少しずつ感覚を掴めてきました。
AIによるサジェスト(提案)機能が非常に良いですね。カルティロープレの中に、AIに「こういうシーンを作りたい!」と相談できる機能があり、イメージを指示することで、AIが様々なシーンを提供してくれて、微調整のみの修正で済みました。
カルティ ロープレの営業サポートはとても良かったです。フラットにそのまま話してくださるのが好印象で、レスポンスも早く細かな評価システムについて的確にアドバイスしてくれました。
弊社の新卒研修の際には、営業担当のお2人が来てくださりサポートしてくださいました。
研修の中で、受講者の方々の意識変革と学習意欲の向上を感じました。実際の効果については長期的な目線で考えていますので、今後、店舗を回って実際の服薬指導を見に行って検証したいと考えています。
各疾患のAIアバターを作成し、新入社員がどの疾患でも対応できるような体制を整えていく予定です。
また、現在は集合研修としてオブザーバーが寄り添って実施していますが、今後は、各店舗にて各自ロープレ練習をできるようになれば、薬剤師全体の質的なボトムアップに繋がると考えています。
調剤業界全体における薬剤師の質的向上にとって非常に有効なシステムだと思います。AIロープレという分野は今後確実に広がっていく領域ですし、早期に導入することで薬剤師のスキル向上や教育体制の差別化を図ることができます。同業他社でも注目度が高まっているので、検討されている企業様にはぜひ一度体験していただきたいですね。
成功のポイントとしては、評価システムの安定化(評価項目・基準の制定など)と、目的の明確化(点数よりも模範回答の学習が重要であることの周知)、そして継続的な活用体制の整備が重要です。
今後、弊社で疾患別のアバターなど作成した暁には、パッケージ化するなどして、調剤業界の皆様に何かしら貢献できるような体制ができると嬉しいと考えています。
点数だけでなく、文章による評価の方が効果的なので、もうすぐ搭載される総合評価機能に期待しています。「こういうのが良かったと思います」「こういうところを伸ばしましょう」という具体的なフィードバックがあると良いですね。
アイリスファーマ様の導入事例からは、カルティロープレが単なる研修ツールを超えて、薬剤師の意識変革と実践的スキル向上を実現していることが分かります。
「研修で楽しそうだった」「考えるようになった」という変化は、将来的に患者さんにより良いサービスを提供するための重要な第一歩です。
従来の限られた研修機会から、個人のペースで反復練習できる環境への転換、そして指導者の負担軽減と効果的な指導の両立など、教育体制の抜本的な改善を実現されました。
今回お聞かせいただいた貴重なご経験とご意見は、調剤業界はもちろん、お客様対応が重要な様々な業界の教育品質向上に大きく貢献するものと確信しております。「個人のペースで練習できる環境」「指導者の負担軽減」「ログを活用した効果的な指導」といった成果は、接客・営業・カウンセリングなど、コミュニケーションスキルが求められる全ての職種で応用可能です。
カルティロープレも、薬剤師の皆様をはじめ、より多くの業界・職種の皆様に価値を提供できるよう、機能改善とサポート体制の充実を続けてまいります。
アイリスファーマ様のような先進的な取り組みが様々な業界に広がり、患者様・お客様にとってより良いサービスの実現につながることを心より願っております。
お話を伺った方
株式会社 アイリスファーマ
人材開発室 キャリアサポートチーム
高橋 様・三好 様
株式会社アイリスファーマは、約65店舗を展開する調剤薬局チェーンです。「かかりつけ薬局」として、安心・安全で正確な調剤業務を基盤に、患者様との対面型で深いつながりを大切にしています。薬のことや健康の不安など何でも気軽に相談できる街の薬局を目指し、地域の皆様の健康をサポートしています。