山梨赤十字病院に併設された通所リハビリテーション事業所「あかまつ」では、要介護・要支援の認定を受けた方々に対し、医師・看護師を含む体制のもとで理学療法士・作業療法士・介護職員が安全にリハビリテーションやレクリエーションなどのサービスを提供しています。
開設当初より継続している体力測定を通して、利用者様にリハビリの成果を伝えていましたが、数値だけでは分かりにくく、利用者様の状態を十分に説明できていないと感じ、リハビリの成果をもっと客観的に共有できる方法を求めていました。そこで導入したのが、姿勢・歩行を可視化できる「シセイカルテ」です。
継続運用に向けた工夫や、現場・ご家族の反響、今後の展望を、山梨赤十字病院の理学療法士である萱沼 達弥 様に伺いました。

あかまつは、山梨赤十字病院に併設された通所リハビリ事業所です。
転倒による骨折、関節の疾患、脳卒中、慢性呼吸器疾患など、ケガや病気によって日常生活に何かしらの支援を必要とする方を対象に、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・介護職員が連携し、身体の機能維持や機能向上に向けて安全なサービスを提供しています。
あかまつの立ち上げ当初から、握力・片脚立位・10m歩行速度といった体力測定を実施してきました。しかしながら、数字だけを見ても身体の状態が良くなったのか悪くなったのかという判断や説明が難しいのが率直なところでした。利用者様ごとに要介護度や病歴、生活状況などの前提条件が一人ひとり異なるため、測定結果を一律に扱うことはできません。結果として、数値の変化に、リハビリテーションの効果がどの程度影響しているのかを明確に捉えることが難しい状況が続いていました。
そのため、リハビリの成果をより客観的に可視化し、利用者様に納得感をもって伝えられる方法はないかと模索していました。
きっかけは、利用者様のご家族が他社の姿勢分析結果を共有してくださったことです。こんな方法があるのかと知り、うちでも導入できないかと検討を始めました。
デモを依頼して比較検討しました。あるサービスは姿勢の判定が10点満点の評価で分かりやすい一方、継続して使うとなると変化が見えづらく、利用者様もスタッフも飽きてしまうのでは、という懸念を抱きました。
一方でシセイカルテは、評価が細分化されており、それによって変化が分かりやすく、身体のねじれ等も含めて身体の状態を詳細にとらえられると感じました。
利用者様にご自身の姿勢を見ていただき、その変化を感じていただけると、今取り組んでいるリハビリに意味があると実感していただきやすいです。また私たちスタッフも、リハビリの効果が出ていることを実感できれば、自信をもって新たな運動メニューの提案や声掛けができると考えました。
体力測定は2月と7月に実施し、シセイカルテを使った姿勢・歩行分析は3ヵ月に1回(1月、4月、7月、10月)実施しています。内容は2ポーズのみで分析ができる「クイック姿勢分析」です。利用者様の半数以上は80歳を超えていて、歩くのに杖や歩行補助具あるいは介助が必要な方もいますが、立位姿勢のみの撮影で分析できるのでありがたいです。また分析に必要な機器がiPadのみで操作も簡単、機器の扱いが苦手なスタッフの操作負担感も少ないため助かっています。

利用者様には「こんな姿勢になっているんだね」、「こうなっちゃうのかな」といった反応があり、体力測定の結果を数値だけを見ていた時よりも、自分自身の身体に興味を持つきっかけを提供できていると感じます。特に「左右の傾き」が中央に表示されると喜ばれますし、「未来姿勢」は将来のイメージが視覚的に分かるので直感的に理解いただきやすい要素だと思います。
また、私たちスタッフと利用者様のご家族やケアマネージャーとで定期的に開催される会議の際にシセイカルテの分析結果を紹介すると、現状のイメージがつきやすいようでとても喜ばれます。今後はデイケアを卒業しデイサービスへ移行していただく際の判断基準にもなるように、施設内の会議で分析結果を共有するようにしています。
シセイカルテを活用していることを当院のホームページに掲載したところ、通所リハビリの利用を検討するご家族から何件か問い合わせがあり、あかまつを選んでもらう決め手となるなど、新規のご契約につながったこともありました。
導入当初は目新しさもあって楽しく取り組んでいただけますが、長く使うと慣れや飽きが課題になります。特に事業所を利用される方は、高齢かつ何かしらの疾患や障害を抱える要介護者です。要介護者はリハビリの成果が出るまで時間がかかるため、変化が見えないときにリハビリの意味を伝えることが難しいです。
その一方で、変わらないことには「今の身体機能や生活を維持できている」と解釈することもできます。加齢により年々衰えていく身体機能を維持できている、そこにリハビリの価値があります。「分析結果」だけでなく「生活の継続」と関連づけて、分かりやすいように噛み砕いた説明ができるようにしたいと考えています。

なかなか、利用者様“全員”が同じようにモチベーション高くリハビリに取り組むというわけにはいきませんが、シセイカルテをきっかけに自分の身体に興味を持てたり、リハビリに励む人が一人でも増えれば十分価値があると思っています。
今後は、山梨赤十字病院の入院患者様への活用を検討しています。慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの慢性呼吸器疾患、心不全・狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患の方は、歩行能力が疾病管理や生命予後に関係することが知られています。そのために重要となるのが「運動習慣」をつけることです。シセイカルテを導入し、患者様にご自身の身体を知り、興味を持っていただけたら、運動習慣の獲得につながるのではないかと期待をしています。定期的な外来診察の際に姿勢を分析・可視化し、「この運動を頑張りましょう」と患者様に運動プログラムを提案し、運動の定着に向けて伴走するためのツールにできればと考えています。すでに何人かの患者様での試行も進んでおり、対象となる方がいれば順次実施していく方針です。
導入後も、定期的にミーティングをしてもらえるのが良かったです。分からない点が出てきた時には教えてもらい、次回には使えるようになる。特に導入当初はそういった伴走体制が助かりました。
脳卒中による片麻痺の障害がある方は、歩行のスコアが出にくい傾向がありました。片麻痺者特有の歩き方は、シセイカルテが持っている基準から大きく逸脱する傾向にあるからだと推測します。今後、幅広く様々な障害をお持ちの方にも利用できるようになると、リハビリテーションの現場に広く導入されるのではないでしょうか。
萱沼様、貴重なお話をありがとうございました。
通所リハビリテーションあかまつ様では、体力測定の“数字”だけでは伝えきれなかったリハビリの価値を、姿勢・歩行の可視化によって共有できる形へと進化させようとされています。
利用者様の「身体への関心」を引き出し、ご家族やケアマネージャーの納得感を高め、さらに今後は入院領域へも活用される方針です。
シセイカルテは運動継続の“きっかけ”づくりを支えるツールとして、現場に寄り添いながらアップデートを続けてまいります。
下記にホームページ情報を記載しております。興味のある方は、ホームページをご覧いただきお問合せください。
https://www.yamanashi-med.jrc.or.jp/
お話を伺った方
日本赤十字社 山梨赤十字病院
理学療法士
萱沼 達弥 様
通所リハビリテーションあかまつは、山梨赤十字病院に併設された通所リハビリテーション事業所です。住み慣れたご自宅や慣れ親しんだ地域で、その方らしい生活を過ごせるように、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・介護職員が心身機能の維持・向上を目標にサービスを提供しています。